(2022.09.12)日本商工会議所 社会資本整備専門委員会 参加報告(北海道 帯広市他)
- 令和4年8月10日(水) 日本商工会議所 第7回社会資本整備専門委員会が北海道帯広市に於いて開催され、委員である平野 眞幸 氏(当所常議員)が出席しました。
(開催内容)
- 荒木委員長(富良野商工会議所 会頭)より開会挨拶。
- 議事1として、国土交通省 総合政策局 倉石地域交通課長より、「アフターコロナに向けた地域交通」の『共創』によるリ・デザイン(刷新・再設計)について説明。
(要旨)
- 人口減、少子高齢化が進むなか、地域交通の価値・役割を見つめ直し、移動サービスの質・持続性を向上するため、地域の多様な関係者による「共創」に係る実地伴走型の研究会を昨年11月に立ち上げた。
- 内容は、交通全体を一本の木 「幹(新幹線・航空)」、「枝(都市鉄道・路線バス)」、「葉(地域コミュニティ:オンデマンドバス等)」になぞらえ、ファーストワンマイル(自宅からの最初の移動)を発想の起点とし、主に「葉の交通」について官民や分野に捉われない「共創(※)」を実践することにより、くらしのニーズに基づく持続可能な交通を実現するモデルを研究しているとのこと。
- (※共創:交通事業者だけではなく関連する事業者等が共に作り上げていくこと。)
- その共創モデルの事例として、帯広市における十勝バスと、十勝ヘルスケアクリニックが連携したバスターミナルでの簡易健康診断や、貨客混載バスの運行等について紹介。また、地域コミュニティの構成員が交通を自分ごとと捉え、積極的に使用するという意識をもって関わっていくことが地域にとって必要不可欠な「地域の足」の存続に繋がると説明。
- その後、十勝バス㈱ 野村代表取締役社長(帯広商工会議所 副会頭)より「十勝バスを中心としたMaaSの取組み」について説明。
(要旨)
- 路線バス1便あたりの平均利用者数が1~2人のなか、沿線の住人になぜ路線バスを使わないのかヒアリングをすると「バスの乗り方を忘れた」、「運賃がいくらかわからない」、「バスがどこに向かっているのかわからない」とのこと。住人の不安解消を図るため乗降方法の掲載や行先の見える化、また路線バスであるが乗客の9割が地元の方以外の観光やビジネス客であったため、路線上の施設(温泉、施設見学、街道めぐり等)と路線バスの組み合わせたパッケージ商品をつくることで利用者数が増えていった(2012年3,200名→2017年6,500名 ※ここ数年はコロナ禍により減少)。
- 加えて、MaaSの取組みとして、当時ジョルダンなど主要乗換案内アプリは路線バスをカバーしていなかったため、IT会社と組んで路線バスに特化したアプリを開発した。(※その後、Googleや主要乗換アプリが路線バスを既存アプリに組み入れた。)
- 現在の取組みとして、コロナはもとより人口減少が加速度的にすすんでいるなかどうすればバスを利用してもらえるのかを考え、他業種の事業者と共に地域コミュニティにおける生活の最適化を図ることで人口の過密地域(町内会レベル)をつくり、路線バス事業等の需要増加を図っている。具体的には、十勝バスが帯広市大空地区で展開する「にくや大空(日中:地域のコミュニティ空間、夜:焼肉屋)」をミニバスターミナルに見立て、バスの待合にとどまらず、カフェやミニマルシェ、簡易健康診断等、多様なサービスを提供し、地域住民の生活の質の向上を図ると共に、地域住民のコミュニティの拠点を構築した。今後、大空地区(町内会レベル)のような地域コミュニティを複数つくり、それらが繋がることで、大きなコミュニティ(街)となり、結果 事業発展に繋がると説明がなされた。
- <その他大空地区におけるMaaSの取組みとして、「おおぞらライナー」を紹介>
- おおぞらライナーとは、ワンボックスバスで人工知能を使い予約に応じて運行するデマンド交通。時刻や決まったルートはなく、利用者がスマートフォンアプリ等で乗車場所や時間などを予約。他の乗客と相乗りになる場合は、走行中の車両の位置と予約内容をもとに、AIが最短ルートを計算する。(料金200円~500円)
- 十勝バスは、先代がバス利用者の減少から今後について息子である現社長に相談したところ、ホテル業界から戻り跡を継いだ。社長に就任し、路線バス沿線の住民になぜバスを使わないのかの聞き取りをはじめた。聞き取った内容を愚直に改善した結果、その路線のみ売上が前年比で増加したことで、従業員も当社に必要なことであると認識し、現在では積極的に聞き取りを行っているとのこと。当所に置き換えても、会員事業所のニーズを上手く汲み取り、事業に反映していく必要性を再認識した。
(事務局: 大河内)